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1.はじめに
集中治療医学が確立した現在,ICUにおける医学的リハビリテーションによる治療的介入が増加している.理学療法士および作業療法士には,救急を含めた集中治療の知識と他の専門職とのチーム医療が求められている.そこで本稿では,病院内でのICUの役割を紹介し,リハビリテーション医療との実際の関わりについて述べることにする.
ICUの始まりは手術室に併設された回復室である.フローレンス・ナイチンゲールは1863年,「手術後の患者が周術期に手術室と一般病棟の間の小治療室で過ごすのが一般的である」と記述している.その後1930年代には,ヨーロッパや米国において回復室と集中治療を行う部門が一緒になった病棟が設置された.第二次世界大戦中は,戦傷者のための野戦病院や集中治療を行う特殊病棟が作られて救急患者の管理が進歩し,世界大戦後はポリオの流行を契機に人工呼吸器が発達した.それに伴い,肺理学療法とともに集中治療のシステムが進歩した.
1960年代に入って米国では,疾患の重症度により患者を分類し,その必要度に応じた治療の集中と効率化を図るというプログレッシブ・ペイシャント・ケア(proressive patient care;PPC)の考え方が発表され,医療経済的な面からICUの概念が確立された.日本においては1960年以後,各地の施設にICUが開設され,1974年には第1回日本ICU研究会が開催され,専門医学としての集中治療医学としてICUの診療体制が確立された1-4).
ICUと理学療法についての最初の報告は,朝鮮戦争(1950年)の戦傷者にみられた肺および胸郭の外傷に対する理学療法の効果についてであった.日本においても,ICUと理学療法の関係は,胸部理学療法や外傷による整形外科的疾患に対する理学療法から始まった.また1970年代には,脊髄損傷と脳卒中に対する早期のリハビリテーションが提唱され,更に虚血性心疾患や呼吸器疾患,腎疾患等の疾患別ユニットが作られ,早期リハビリテーションとして現在まで発展を遂げてきた.
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