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1.はじめに
1940年代,医療技術の目的志向性と専門分化の過程で,リハビリテーション(以下リハ)医学は障害者の全人的復権を目指し,「可能な限り,身体的,精神的,社会的,職業的および経済的な有用性を回復させる」という理念の下,“第3相の医学”として産声を上げた.しかし,疾病構造の変遷,疾病・障害の重度化が余儀なくされるなかで,“有用性の回復”を目指した専門技術優先が,障害者の選別という新たな轍を踏む結果となった1).一方,1970年代には,目標決定における専門家優先に対して,自活生活(independent living;IL)の実践が芽生えてきた.国際障害者年の1981年,障害者インターナショナルのリハの定義には,職業的,経済的という文言は見られず,“各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことを目指し”と謳われ,“どう生きるか”の決定はあくまで当事者自身にあることを明らかにしている2).その後の医療における潮流として,医の倫理,インフォームド・コンセント(以下IC)がキーワードとなった.本誌でも1993年「患者の人権」という特集(27巻1号)を組んでいる.
このテーマを与えられたとき,今,何故にICなのかと改めて問いなおしてみた.在宅医療,在宅ケアが施設医療,施設ケアの対立軸として勢いを増しつつある現在,更に2000年4月に公的介護保険制度が導入されるに及んで,生活の場で「どう生きるか」の自己決定がますます尊重され,制度的にもサービスの利用に関し,計画書の作成を依頼するにしろ,自らサービス利用を選択するにしろ,利用者の自律性が尊重されている.このような時代背景を念頭に置きつつ,与えられたテーマについて考察してみた.
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