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はじめに
一部の子供には日常生活や学校生活において,無器用さやぎこちなさ,あるいは落ち着きがなくじっとしていられないなどが原因となり,さまざまな活動や参加が阻害されていることが散見される.学校教育現場において,そうした子供たちへは主に教育職員が対応しているものの,対応についての知識や経験が十分ではない場合が多く,学校での教育のなかで大きな課題となっている1).
現在,これらの阻害要因は発達性協調運動障害(developmental coodination disorder:DCD)として1つの概念疾患と捉えられるようになった.DCDでの障害の概念について,岡2)は歴史的に考察し,これをminimal brain dysfunction(MBD)やclumsiness,clumsy child syndrome,disorder of attention and motor perceptuomotor dysfunction,motor learning difficicultyと同様の意義としてこれまで使用されていることを指摘した.DCDはその初期において,療育や教育の分野で注目され,その後,医学からのアプローチとして捉えられるようになった経緯を明らかにしている.さらにDCDの症状は,正常と異常の境界線を引くのが実際上不可能であることから,日常生活上での障害の状態を前提として,それが起因するものとしてDCDがあることを述べている.また,DCDは米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM-5)において,神経発達症群/神経発達障害群のなかの運動症群/運動障害群の基準の1つに位置づけられている3).さらに,疾病および関連保健問題の国際統計分類(International Classification of Diseases:ICD-10)では,(F80-F89)心理的発達の障害における(F82)運動機能の特異的発達障害・協調運動障害に分類されている4).
本稿では,まず発達性協調運動障害について,診断基準を通してその特徴について述べ,臨床上の特徴と理学療法との関連について述べる.次にDCDとの合併が多くみられる自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD),学習障害(learning disabilities:LD),注意欠陥多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder:ADHD)の3つの障害の概要と理学療法評価,さらに理学療法の実際について述べることとする.
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