特集 関連領域―腎障害と運動療法
透析患者の理学療法の経験―症例を通した検査値と臨床経過について
恩幣 伸子
1
,
内山 靖
1
,
山田 美加子
1
Onbe Nobuko
1
1北里研究所メディカルセンター病院リハビリテーションセンター
pp.500-504
発行日 1997年7月15日
Published Date 1997/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104817
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1.はじめに
理学療法の対象患者における高齢者の比率は増加傾向にあるが,腎機能障害を有する患者も徐々に増加してきている.腎臓は加齢変化が著しい臓器であり1),高齢化に伴う医療需要は今後も高まるものと推測される.
腎障害の理学療法には,腎機能低下があるものの,固有腎機能が残存している腎障害患者に対する理学療法と,廃絶腎(=腎死)により透析導入・維持期における体液状態を前提とした,代謝と運動の関係に対するものの2つを区別して考えることが基本となる.そのうち腎機能の著しい低下は,尿中に排泄されるべき水分や電解質,種々の代謝産物の蓄積を引き起こし,透析療法などによる血液の浄化が必要となる.我が国における慢性維持透析患者数は,透析療法の普及と技術革新に伴い1995年には15万人を越えている2).
透析患者に対する理学療法は,運動耐容能の低下を改善し代謝異常に対する効果を得るものと,心血管系や透析に伴い生じる様々な合併症を軽減・予防するといった2つの側面がある.理学療法と代謝機能の関連性を考慮し,症状が原疾患によるのか,合併症あるいはそれ以外によるのかを判断して,柔軟に,かつ迅速に対応することが必要不可欠である.
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