Derm.2021
虚仮の一念,岩をも通す
田中 暁生
1
1広島大学大学院皮膚科学
pp.171
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206372
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数ある診療科からなぜ皮膚科を選んだのか?と,後輩や学生から尋ねられることがあります.今となっては,皮膚科学という学問,皮膚科の診療の魅力はこのコラムの字数では書ききれないほど挙げることができますが,学生時代にはその魅力に全く気付いていませんでした.それでも自分の進むべき道を迷っていた大学生のころを思い返してみると,自分が皮膚疾患で困っている患者さんに最も自然に寄り添うことができると感じていたことは,皮膚科を選んだ理由の1つだった気がします.
私がまだ小学校低学年であったころ,近所に症状のひどいアトピー性皮膚炎の男の子がいました.その子は内気な子で,学年も違ったことから話をしたこともありませんでした.ただ,周りの子達と遊んでいる中でいじめられているのをよく見かけていました.私はいじめを仲裁することもできないつまらない男だったのですが,「皮膚がきれいだったらいじめられないんじゃないかな」「○○君を助けてあげたい」と強く思っていたことは,そのいじめられている光景とともに私の記憶に強く刻まれています.病気で困っている人の助けになりたいと思った最初の記憶です.
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