とびら
“小石川の家”にみる癒しの場
木村 美子
1
1産業医科大学病院リハビリテーション部
pp.457
発行日 1997年7月15日
Published Date 1997/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104808
- 有料閲覧
- 文献概要
昨年テレビで観た“小石川の家”というドラマが印象に残っている.このドラマは,明治の文豪幸田露伴とその娘文(あや),孫娘の玉(たま)の3人のつつましい日常生活を描いたものである.時代背景は,昭和初期から太平洋戦争末期ぐらいであり,当時文は,10年間に及ぶ結婚生活に破れ,一人娘の玉を連れて東京小石川にある実家に戻ってきていた.
私がこのドラマに心惹かれたのは,今はもう我々がほとんど忘れてしまった生活の中での何気ない心のゆとりとか,移りゆく季節の中での細やかな情感とか,単にそういったものだけではない.それは一言でいえば,1つの家庭の中に於ける非常にしっかりとした家族関係の存在である.家族の本来あるべき姿,家族の在り方の本質のようなものである.その中では父は父であり,母は母であり,その地位は揺るぎない確固としたものなのである.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.