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はじめに
筋の痙性程度の定量的評価は中枢神経疾患の理学療法のなかで困難な課題の1つである.代表的な痙性の主観的評価法としてModified Ashworthスケール(MAS)1-3)が簡便な方法として普及しつつあるが,痙性抑制の治療効果判定を目的とした評価の場合,日常の理学療法での微小な痙性抑制効果を測定しうる客観的評価法が必要不可欠である.
客観的評価法の1つとしては振り子運動(pendulum)テストがある.これは測定対象関節より末梢の肢を自由落下させ,それにより発生する関節運動が反転に向かう瞬間の角度を測定する方法であるが,その指数算出方法および測定方法は研究者により差異がある.振り子運動テストを行う際の指数の算出においては,Bohannon4,5)の場合,背臥位での膝の最大屈曲角(R0)から下腿を落下させたとき膝が最初に伸展方向に反転したときの角度(R1)を減算する方法を用いて指数を算出している.また,Bajd6)やBrown7),Katz8)は,安静時角(最大伸展角から下腿下垂時の屈曲角を減算したもの)を最初のスイングの開始角度と反転角度の差で除算するリラクセーション・インデックス(RI)と呼ばれる指数を使用している.
また,振り子運動テストの測定方法としてはビデオ9)やエレクトロゴニオメータを用いる方法があるが,臨床で簡便に実施できる測定方法としてはCybex IIを用いた方法があり,検者間信頼性5)およびAshworthスケールとの相関8)が確認され,臨床的に実用可能な痙性評価法としての可能性が示唆されている.
今回われわれは,独自の測定・指数算出方法に基づいたCybex6000による振り子運動テストを考案し,その検者内信頼性・妥当性の評価および他法との比較を行い,痙性評価ツールとしての有用性について検討したので報告する.
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