プログレス
無症候性脳梗塞
鈴木 一夫
1
1秋田県立脳血管研究センター疫学研究部
pp.792
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104419
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1.無症候性脳梗塞が注目される背景
自覚症状も他覚的な神経学的徴候も呈さない脳梗塞,すなわち無症候性脳梗塞の存在は,剖検で古くから知られていたが,近年CTやMRIによって容易に発見されるようになった.無症候性脳梗塞がここ数年にわかに注目されるようになったのは,この画像診断の進歩に起因する.安全に手軽に検査ができる頭部の画像診断は,わが国では検診としての必要条件を満たし,脳ドックを全国的に普及させた.その結果,無症候性脳梗塞は日常診療の場で偶然発見されるほか,脳ドック受診者や地域集団を対象にMRIを用いた報告1~3)を総合すると,平均年齢61歳の集団で13~33%,平均年齢70歳の集団では47%に無症候性脳梗塞が検出される.健康を自覚している人たちからも多く見つかる無症候性脳梗塞に,はたしてどのような病的意義が存在するかが最も興味の持たれる点である.1990年に米国NINDSで提示された脳血管障害の分類Ⅲ版では,無症候性の脳梗塞あるいは脳出血を含めた無症候性脳血管病変を脳卒中易発症状態として臨床的に意味づけている.しかし,無症候性脳梗塞が脳血管障害の危険因子であるとしても,その病型別危険度に関しては明らかにされなかった.さらに画像診断で検出される無症候性脳梗塞という新しい疾病概念そのものが,無症候なるが故の曖昧さと検出手段での問題をかかえている.
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