プログレス
アルコール依存症の神経症状
高橋 美枝
1
,
井上 新平
1
1高知医科大学神経精神医学教室
pp.41
発行日 1995年1月15日
Published Date 1995/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104202
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我が国で毎日,日本酒なら5合半,ビールなら6本,ウィスキーならダブル6杯以上を飲む「大量飲酒者」は年々増加し,1990年の推計で212万人存在する.これに伴いアルコールに起因する神経障害もふえ,人口10万に対する有病率は900~1200と推定されている.具体的には日本酒3~4台を10年以上連日飲む人の1/3は表1に示すようなさまざまな神経障害にかかる危険性がある.よくみられるのはニューロパチー(90%),ミエロパチー(27%),小脳変性症(23%),離脱症状(10%)の順であり,これらが重複して出現しやすい.以下,表でアンダーラインを記した主要な病態について解説する.
長期間にわたる大量飲酒を急激に中断すると,アルコールによる抑制が解除され神経系の異常興奮が起こる.これが離脱症状であり,手指振戦,不安,焦燥,不眠,アルコールてんかん(全身痙攣),振戦せん妄(幻覚・意識障害・振戦・頻脈・多汗)が出現する.
Wernicke脳症では意識障害,失調歩行,眼球運動障害が急性に発症する.後遺症としてKorsakoff症候群(失見当識・作話・記銘力障害・記憶障害)を来すことが多い.
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