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Ⅰ.初めに
関節拘縮は常日ごろ理学療法の対象として,経験する頻度の高い病態である.古くから関節可動域(以下,ROMと略.)訓練が行なわれ,一般に自動運動,他動運動,および他動的伸張運動などの方法を有効,かっ適切に行なうことが重要であると言われている.しかし,症例によってはその治療に難渋するものもあり,適切な治療を行なわなければ,新たな拘縮を作ってしまうことになる.「拘縮に対する効果的な治療」,それは古くて新しいテーマと言える.
さて,理学療法においてはその成因,病態,治療1)などをよく把握し,まず拘縮を作らないことが目的にある.一つに筋のリラクセーションが重要であるが,筆者はこれまでに,術後早期に行なわれるCPM(Continuous Passive Motion)が最も目的にかなった方法であることを筋電図学的に分析した2).一方,拘縮移行期および拘縮期においては拘縮に陥った筋や結合組織に対して疼痛を引き起こすこと無く伸張を加え,ROMを改善する目的がある.しかるに,従来行なってきた徒手や砂袋などによる他動的伸張運動はつねに疼痛を伴う.患者は恐怖感を抱いたり,一方では「苦痛を我慢すれば良くなるだろう.」と思い違いする場合もある.いずれにしても,翌日にはせっかく獲得したROMが元に戻ってしまう症例が多く,中には拘縮を助長してしまう症例もある.したがって治療効果がなかなかあがらないことを経験する.この時期においては獲得したROMが戻らないように,もっと治療内容を検討して,例えば訓練時間を長くしたり,訓練の頻度を多くするべきではなかろうか,この点では運動療法のみでは限界がある.ここに装具を治療用として使用する意義があるものと考える.
そこで今回は関節拘縮に対する「治療用」装具の意義と効果や,運動療法との関連について,筆者が経験した肘関節拘縮に対する装具治療3)を例にして検討する.さらにその基礎となる結合組織に関して,文献的考察を加えて解説する.
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