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Ⅰ.初めに
新理学療法カリキュラムに移行して早くも1年が経過し,2年目に入り少しずつその問題点と改善点とが明らかになりつつあるのではないかと推察している.新しいカリキュラムの良い点が生かされ,さらに問題点も創意工夫により改善の方向に向かって歩み始めているのかどうか,あるいは問題点が多すぎて良い点の影も薄くなってきているのか,いずれにしても問題解決に向けて行政の関係者および教育関係者の英知と努力に負うところが大きく,敬意を表したい.
21世紀に向かって社会経済は,大きく動いている.保健・医療・福祉の分野も変動・変革の時代へ動きつつある.この分野における変化については,すでに言われていることであるが,第一に,急速な人口の高齢化で,平均寿命は1985年には男74.8歳,女80.5歳となる.65歳以上の比率は,1945年の5.1%,2000年の16.3%,2021年で23.6%とピークを迎えると推計されている.しかも,後期老年人口(75歳以上)は,2000年の6.4%,2025年の12.9%と推計され,有病率,寝たきり率,痴呆性老人出現率は高齢になるほど上昇するので病気・各種合併症を有した高齢者が増加することである.
第二は,疾病構造の変化で,悪性新生物,心疾患,脳血管障害などの順に約7割を占めることである.
第三は,科学技術の進歩を基礎にした医学医術薬学の著しい進歩による医療の高度化,専門化が,ある一面で保健医療の高水準化をもたらすが,他面で資源の適正配分化の問題,生命倫理にかかわる遺伝子操作,脳死・臓器移植などの人間の生死観にまで波及することである.
第四に,国民の健康に対する意識の高まりと,それに対する保健医療福祉に対するニーズの多様化と質量の高まりである.
第五に,保健医療福祉の供給システムの効率化,合理化および経済問題についての論議の高まりである.チーム医療の在りかたもその一つである.
第六に,家族・家庭の機能の変化により,介護機能の低下傾向などにどのように対処するかである.
第七に,国際化社会にどのように対応してゆくのかが,問われている.
そうした社会経済,保健医療福祉などをめぐる環境変化の中で理学療法教育のカリキュラムの政正が実施された.
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