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Ⅰ.初めに
最近,地域リハビリテーションへの指向は著しいものがある.これは高齢化社会を背景とし,医療面では成人病の増加に加え,その疾病の慢性化,重複化,重度化の傾向が社会的課題として押し寄せてきているからであろう.また,これに伴う医療事情の厳しさから,将来の社会保障制度も種々模索されつつある.リハビリテーション医療の分野においては,患者の入院治療,施設収容の方向から在宅療養へのうねりが急速に高まりつつある.
疾病や障害を有しつつ,在宅でいかに円満な生活を構築していくかはリハビリテーション医療にかかわる理学療法士の領域でも大きな課題である.われわれ理学療法士にとって,“在宅での生活,すなわちADL”をいかに考えるかということが,差し迫ったテーマである.われわれ理学療法士が主として活動してきたところは“病院”という治療の場であったため,“家庭”という生活の場における理学療法のノウハウに欠けている点は否めない.そこで,将来に向けて障害者の在宅生活を支えるためには,日本の家庭や生活に根ざした実践的な方法論を積み上げていく必要がある1~4).
ADLの背景には気候,風土,生活習慣,文化などといったものがあり,地域,人種,国などによってさまざまである.そういった中で日本的なADLは障害者にとって困難なものが多く,障害者の在宅生活において洋風化が随所に見受けられるようになってきた.
これが障害者にとっておおいに有効であることは言うまでも無い.しかし,“家族の生活環境”をともに考えた上での“障害者の生活行為”でなければ,障害者には円満な在宅生活は望みにくい.障害者のための生活環境と既存の環境との融和が重要である5).
われわれの周囲には生活様式の洋風化が普及してはいるが,厳然として和風の家屋構造があることも確かである.この和洋折衷の生活環境の中で,障害者と家族とが円満に共存できる方策を提供することがわれわれの今日的課題の一つと考える.
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