とびら
苦情の中にヒントあり
岩田 章史
1
1島根医科大学附属病院理学療法部
pp.305
発行日 1991年5月15日
Published Date 1991/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103263
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今日たいていの企業には,顧客や消費者からの苦情を受け付ける係が置かれている.当然楽しい仕事内容ではないので,誰もが担当するのを嫌がる部署である.しかしある会社では,経営者自らが苦情の電話を受けているという.その理由は「苦情の中にこそ,新しい商売のヒントがあるから」だそうである.この話を聴いたときには,「奇特な人もいるものだ」と軽く聞き流していた.
さてある日,当理学療法部に,歩行能力の改善を目標として慢性関筋リウマチ(RA)の患者さんが来られた.下肢の筋力その他の状況から,実用歩行獲得のためには杖が必要と判断した.手指の変形もあったので,それまで数回作ったことのある,松葉杖の腋窩支持部にプラスチックのスプリントを固定した,前腕支持型のものを作ることにした.慣れない手つきでの数時間の夜鍋仕事の末どうにか完成し,翌日患者さんに杖を渡した.ところが「重くて肘が痛くなる」と意外な答が返ってきた.「人が苦労して作ったのに」という気持を抑えて,「何とか考えてみましょう」と返事だけしておいた.
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