とびら
生きがい
大川 達也
1
1順天堂大学伊豆長岡病院
pp.75
発行日 1991年2月15日
Published Date 1991/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103196
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寝たきり老人,痴呆老人に関係する記事は毎日の新聞でこと欠かない.国民がそれだけ関心を示していることだろうか.国もまたそれに対応するかのように新たな施策を試みている.安上がりの法改正と批判されながらも,福祉の権限を市町村に移管したり,地域における介護に関する職種を新設することもその一つに当たる.しかしながら,世をあげて高齢化社会を憂えているわりには,施行する側は何か施策を作ることによってその責任を果たしたとし,受ける側は他人まかせの何とかなるだろうという安心感,お互いに責任転嫁の風潮が無いとは言えない.先日の新聞にも,老人介護業の育成のためには,若者ことに女性に関心をもたせることが急務という行政の提案に対して,「なぜ介護者が女性でなくてはならないのか,人間いつかは衰える,そうであれば老人とは自分自身のこと,我が身を寝たきりに置き換えてどう介護してほしいのか,それが寝たきり老人の望む介護,きれい事の通らない力仕事,奥様に一日寝てもらい食事の介護や寝間着交換をしてみたらいかが,それだけでも考えることはたくさん有るはず.」健常者すべてが介護者だという一女性の声である.器だけを充実させてもその中味である.このことは,介護する側される側にも問題の有ることを意味している.
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