特集 看護のなかの生きがい
‘生きがい’ということについて
谷口 隆之助
pp.400-406
発行日 1974年4月1日
Published Date 1974/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916983
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いま多くの人たちが,さまざまのかたちで自分自身のなんらかの‘生きがい’を求めているということは,一般の事実だと言ってよいであろう.そして‘生きがい’ということがいまあちこちで盛んに論じられている.
いま多くの人たちがことさらに生きがいを求め,またいまことさらに生きがいについて多くの論議が行われているという実情は,裏返して言えぼ,それは現代人の多数がいま生きることの意味を見失い,さまざまの不安や焦燥にかられ,自分が1人の人間として生きているという充実感はもとより,その実感をすら持っていない,という現代の人間状況をそのまま反映していることにほかならない.そして,現代のような文化的・社会的,また人間的状況の中では,人がことさらに生きがいを求め,生きがいについて論じ合うのもむしろ当然のことなのだと言ってよい.
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