ホームヘルパー跳びある記・8
与えられる‘生きがい’?!
松田 万知代
1
1藤沢市役所‘老人いきがい課’
pp.1333
発行日 1978年12月1日
Published Date 1978/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918575
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私たちヘルパーが老人たちと仕事上かかわりを持つようになれば,かならず終末介護は覚悟しなくてはなりません.家族のいない独り暮らしの老人,家族はいても別居のためヘルパーの訪問を必要とする老人たちは,高齢で病弱となると,日を重ねることが死へ一歩一歩近づくことになるのです.希望のない毎日の中で,絶え間ない孤独感と,近づく死への恐怖,病苦に対する不安などで,1日でも早くと死を願いながら,一方では病院に通い多量の薬を飲みつづけるという一見矛盾した行為も,老人独特のもののようです.
老人たちにとってヘルパーの訪問は孤独や死への恐怖,病苦を忘れる一瞬なのです.自分の唯一の理解者であるヘルパーに対しては,安心して甘えられる気安さからわがままになり,種々の訴えをします.夜眠れない,頭痛,めまい,食欲がない,胃が悪い,便秘や下痢,手足や腰の痛み……こうした老人たちの愁訴の中から真実を汲み取るのは,医学の知識のないヘルパーにはたいへん難しいことです.ヘルパーの仕事の内容は家事介護に関すること,日常生活上の相談助言に関することであり,老人福祉の主流は,まず健康の保持と安らかな生活ですが,老人たちが真に望むのは,それにつけ加えて安楽な終末ケアなのです.
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