とびら
『生活』
吉尾 雅春
1
1協和会病院理学診療科
pp.213
発行日 1990年4月15日
Published Date 1990/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102984
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世の中は好景気.GNPの伸びも堅調で,日本は世界一の金持ち国に,そして地価も世界最高になってしまった.高級車ばかりが目につく我が街・千里では,1坪500万円とも600万円とも言われている.わずか50坪の土地にマイホームを構えようと思っても,理学療法士の給与では夢のまた夢.地に足を着けた生活をしようにも,都市部ではかなわぬこと.宝くじに夢を託すほうが,まだ現実的であるような社会.この国には政治はないのかと声を大にして叫んでも,負け犬の遠吠え.どこかまちがっているように思う.独裁国家から民主国家へと大変貌した東欧の国々にも今後,市場経済主義が導入されることになろうが,我が国のような恥ずべき社会にだけはならないでほしい.動物は自らが帰るべき巣を求めるが,それさえもかなわぬような日本のどこに魅力を感じるのだろう.
ところで不思議なことに,地価や物価に大差があるにもかかわらず,診療報酬は全国統一.すなわち,医療機関の保険収入は都市部であろうと地方であろうとまったく同じ.これからは理学療法士も地方に生活の場を求めていったほうが賢明なのかもしれない.そのほうが生活の中に潤いを求めることができるような気がする.
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