理学療法臨床のコツ・29
脳血管障害に対する理学療法のコツ・2―筋緊張抑制のコツ
佐藤 房郎
1
Fusao Sato
1
1東北大学病院リハビリテーション部
pp.630-632
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102347
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筋緊張のとらえ方
筋緊張には,筋組織のもつ粘性と神経系による張力の制御状態が反映されている.筋線維の結合組織であるコラーゲンは,弾力性のない線維の集まりで内部抵抗に関与しているが,運動や熱でゲル状に変化し伸張しやすくなる特徴がある.神経系による制御機構は,脊髄反射をベースに高位中枢で統合・処理され,重力環境に適応するために体位や運動課題に合わせて調節されている.筋緊張は随意運動と自律的な姿勢制御に関与しているが,生得的な運動パターン(シナジー)が素地を成し,発達過程で運動の自由度の凍結と解放を繰り返しながら経済性と巧緻性が獲得される1).
脳血管障害による筋緊張の異常には,異常亢進(痙縮と強剛),異常低緊張,動揺があり,症候学的にはこれらが混在している.随意運動と自律的な姿勢制御が制限された状況では,非麻痺側優位で努力性の活動に陥りやすい.また,先行随伴性姿勢調節の欠如は代償的な運動パターンが強化される背景と考えられる.岸本らが「異常筋緊張の評価は,筋を個別に評価するのではなく,緊張性反射活動を背景にした異常な運動パターンや,正常な姿勢調節機構の過剰代償適応の結果としてとらえる必要があろう」2)と述べているとおり,脳血管障害の筋緊張の問題は,不適切な脳の可塑性の結果と解釈できる.
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