理学療法臨床のコツ・30
脳血管障害に対する理学療法のコツ・3―筋緊張抑制のコツ
澤田 明彦
1
Akihiko Sawada
1
1七沢リハビリテーション病院脳血管センター理学療法科
pp.760-763
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102381
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はじめに
脳血管障害後遺症者は,上位運動ニューロン症候群とこれに続く低運動状態や運動の再獲得の過程で筋緊張亢進状態を呈する.筋緊張亢進の中心を成す痙縮の病態は,脊髄神経機構の機能変化と,より上位の中枢の調節障害が想定されているが,不動や異常な筋収縮の結果による筋の伸展性低下といった生化学的な問題も含む.筋緊張亢進は単なる反射の亢進よりも,もう少し複雑な構成であると捉えられている(図1)1).
筋緊張の抑制がどのような作用機序で得られるかについては,推論の域を出ないことが多い.例えば上腕二頭筋の抑制を考えた場合,近位橈尺関節の関節授動によるものは,筋膜を介した生化学的な要因ではないかと考えられる.一方,麻痺側を下にした側臥位をとることで上腕三頭筋の緊張が高まり,上腕二頭筋の緊張が減ずるのは姿勢変化に伴う神経原性の作用ではないかと考えられる.いずれにしても変化を提供できなければ作用機序の解明も困難であることから,技能を構築しin vivoでの計測が可能となる日を待つしかないのかもしれない.
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