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はじめに
予断を許さない経済の先行きや少子高齢人口減少社会が進行する中で,住民の生活,健康,福祉,安全を確保し,真の豊かさの共有を図り,笑顔でつながる未来に夢の持てる成熟した社会づくりが求められている.それを実現していくにはそれぞれの地域の道のりがあり,そのための施策を展開していく事務局となるのが地方自治体である.基礎的自治体である市区町村職員はこれらを計画・実行していくことを仕事としている.
一方,理学療法士は医療系専門職として高い社会的評価が得られており,医療現場のみならず,健康増進,介護予防から末期医療に至るまで広域の範囲で専門職機能の提供が求められている.これからも臨床場面を中核に活動していく理学療法士であるが,地域包括ケアの体制構築が進められる中で,保険種別,施設・在宅の垣根を越えて地域特性に応じた効果的,効率的なサービス提供体制を築いていく一員として役割強化を進めていくことが喫緊の課題となっている.保健福祉領域を中心に自治体施策の課題解決と事務事業の高度化に寄与していくことは理学療法士の職種全体としての重要な責務であるが,理学療法士である自治体職員にとってはそれが本務であり,住民,関係職種,そして同じ理学療法士から期待が高まっている.ここでは,地方公務員である理学療法士のキャリアデザインについて,これからの世代の人がたくさん入職し活躍して欲しいという筆者の願いを軸に,先行データをもとに私見を記す.
筆者のキャリア(職歴)の概要を記す(表1).リハビリテーションという人間を大切にする仕事に夢を抱いて入り,その現場に踏み入った途端,障害老人を取り巻く環境は途方もなく厳しい状態にあることを知り,一つの医療機関ではどうしようもない現実を突きつけられたのである.その現実が私を地域リハビリテーションの考え方と方法の必要性を気付かせ,その施策を担っていくことができる地方公務員の職に就かせたのだと振り返ることができる.
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