講座 臨床検査データの理解と活用法・2
加齢に伴う臨床検査値の変化―検体検査からみた高齢者の特徴
沢 丞
1
Tasuku Sawa
1
1石心会川崎幸病院
pp.153-157
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102197
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はじめに―基準値とは何か
検体検査における臨床検査値は,参考基準値,あるいは単に基準値として上限と下限が設定されており,これにしたがって,高値,低値を表現している.基準値は健康と考えられる集団での臨床検査値の分布が正規分布を採るものとして,統計学的に平均と標準偏差から導き出したものである.具体的には高値側2.5%と低値側2.5%を切り捨てて,上限と下限を設定している(図).すなわち,もともと「健康と考えられる人」であっても全母集団の5%は基準値より外れてしまうことになる.検体検査における臨床検査値は,数字というきわめて明快な表現と,基準値という明快な「切り口」が設定されているため,一見,厳格で議論のない指標と捉えられがちであるが,実際には統計というプロセスを経て決定されているものであるので,健康人でも基準値から外れることは十分ありえる.基準値はともすると「正常値」であり,そこから外れるとすなわち「異常値」である,というイメージで受け取られてしまいがちである.
以上のような成り立ちからみても,基準値は「正常値」ではないことは明らかである.私たち医療従事者は臨床検査値という物差しの意味するところを十分理解して,患者と向かい合わなくてはならない.
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