今月の臨床 高年婦人科—更年期から老年期へ
加齢による変化
3.加齢に伴う性器変化
笠井 寛司
1
Kanji Kasai
1
1滋賀医科大学産科婦人科
pp.907-909
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900953
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特別な例を除けば,一般に女性の生涯を機能の面から次の期に区分できる。すなわち,妊孕性未獲得期,妊孕可能期および妊孕性喪失期である。それぞれの移行期として前2者の間に思春期が,後2者の間には更年期がある。内外両性器は身体の変化と共に上述の3期に応じて機能・形態的に変化し,しかも上述の移行期に顕著に現れるが,思春期と更年期以降では同一期間内に起こる変化の程度は異なり,後者は前者に比べてはるかに穏やかである。また前者は発育,後者は萎縮という方向性をもった変化内容というだけではなく,変化をもたらす要因にも違いがある。思春期変化をもたらす要因は,遺伝,環境など主として非人為的要因であるのに対して後者は各個体が妊孕可能期に獲得した人為的要因に影響される部分が少なくない。とりわけ外性器の変化は個体特有の獲得要因との係わりが大きい。
したがって加齢に伴う性器の変化は当然人為的要因を十分考慮した上で論じられなければならないのであるが,不十分な紙面では変化の全容を紹介することは不可能であり,変化の傾向を述べるに止めた。また内性器についてはすでに成書に明記されていることなどを勘案して,本編では自験成績をもとに更年期周辺の外性器に見られる加齢変化のみに限定した。しかし外陰部の定義には含まれないが,老齢期に最も特徴的に現れる外陰周辺の変化が陰毛の様相であることから,あえて外陰の加齢変化の中に加えてみた。
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