入門講座 高齢者の理学療法を行うために知っておこう—検査・栄養・薬・運動・1【新連載】
高齢者の検査値の特徴
佐藤 尚武
1
Naotake Satoh
1
1順天堂東京江東高齢者医療センター臨床検査科
キーワード:
高齢者
,
臨床検査値
,
加齢変動
,
性差
,
共用基準範囲
Keyword:
高齢者
,
臨床検査値
,
加齢変動
,
性差
,
共用基準範囲
pp.853-860
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201311
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はじめに
「高齢者の検査値の特徴」を語るうえで難しい点は,高齢者の健康状態の定義が困難であるため,検査値の判断指標である基準範囲の設定が難しいことである.基準範囲(基準値)の設定手順を表1に示す.後述するが,検査値には加齢変動を示すものがあるので,高齢者に対しては高齢者用の基準範囲を設定し,これを指標として検査値を判断することが望ましい.
高齢者の基準範囲を設定するためには,高齢者の基準個体を選定する必要がある.基準個体を健康な高齢者とした場合,加齢に伴って身体機能の個人差が大きくなるため(図),この健康な高齢者の定義が難しいのである.一定年齢の成人までは,身体機能の個人差は比較的小さいので,肥満度や自覚症状,慢性疾患,服薬などの有無で選別すれば,健康成人を基準個体として選別することは比較的容易である.しかし高齢者の場合は,自覚症状や診断されている慢性疾患がなくとも,身体機能が低下し図のグレーゾーンに至っている個体が少なからず存在する.このグレイゾーンの個体を基準個体としてよいかどうかという点と,健康な個体とグレイゾーンにある個体との識別が難しい点が,高齢者の検査値を考える際の問題点となる.
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