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はじめに
日本における65歳以上人口は1997年(平成9年)に1,975万人(総人口の15.6%),2007年には約800万人増加し,2025年には総人口の28.7%が65歳以上になることが予測されている(図)1).欧米諸国と比較して,65歳以上人口の増加が急速であることが日本の特徴である.また,身体障害児・者等実態調査において,身体障害(視覚障害,聴覚・言語障害,肢体不自由,内部障害)者数は,2001年から2006年にかけて7%増加(324.5万人から348.3万人)しており,うち内部障害が84.9万人から107万人と増加が最も著しい2).さらに,障害を重複して持つ者は2001年に17.5万人であったのが,2006年には31万人となり,増加している.
糖尿病は慢性的な高血糖の持続によって特有の三大合併症(網膜症,腎症,神経障害)を併発し,また,糖尿病に起因する足病変の合併などが影響して運動障害を呈することから理学療法領域にも関わりが深い3,4).糖尿病は,世界的にも増加の一途を辿っており,日本においては1997年に患者数は690万人であったのが,2007年には890万人,2025年には1,400万人5)になることが予測されている.日本では,65歳以上人口が急増し,重複して障害を持つ者が増加していることに加え,糖尿病患者数も一層増加することが見込まれている6).この現状の中,理学療法対象疾患の推移を概観すると,上位対象疾患に大きな変動はないが,65歳以上人口および糖尿病の経年的増加に関連し,理学療法の対象疾患としての糖尿病の順位は上昇している7).さらに,日本人の2型糖尿病疾患感受性は高く,発症予防には早期から長期的視野でのアプローチが必要である8).
これらの事実は今後,糖尿病患者および糖尿病を合併する患者が理学療法の対象疾患になることが現状よりも多くなり,成人・小児別,糖尿病型別,糖尿病コントロール状況,糖尿病合併症の有無や重症度に応じた理学療法を実践しなければならない機会が増えることを裏付けるものである.本稿では,医学分野の文献データベースから得られた情報をもとに糖尿病治療における理学療法の進歩について解説する.
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