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5月末に第46回日本理学療法学術大会が宮崎で開催されました.日本の理学療法の未来を問う大会でしたが,未来を考える前に宮崎ではいろんなことがありました.牛の問題や新燃岳の噴火により深刻な被害を受け,東北の大震災と重なって開催そのものが危ぶまれる状況になりました.なんとか大会初日を迎えることができるというときになって台風2号の影響をもろに受け,航空便の欠航や行き先変更などのために座長が変更になるなど,大会本部の御苦労,心痛は相当なものだったことでしょう.しかし,4,000人近い理学療法士が集って活発な意見交換がなされ,充実した3日間であったと思います.日本の理学療法の未来を考えていく中で,たくさんの課題が明らかになってきました.臨床においてもさることながら,教育現場も大きく変革しなければならない課題がそれぞれの領域から示されたのです.
今を,そして未来を考えるとき,これまでの歴史を振り返るという手続きも大切なことです.本号特集では神経生理学的アプローチに注目してみました.APTAではNUSTEP Conference,Ⅱ STEP Conference,そしてⅢ STEP Conferenceを通して中枢神経障害に対する運動療法のあり方を検討してきました.それは狭い範囲の神経生理学的アプローチの紹介から,システム理論や脳科学の発展,およびICFの概念を受けた幅広い内容への変遷に至るまで,世界の理学療法に道筋を示してきた歴史的過程です.日本において中枢神経障害の理学療法にかなりの影響を与えてきた神経生理学的アプローチはどのような経緯を辿ってきたのでしょうか.特に脳卒中の理学療法について,現在でも多くの理学療法士たちに受け入れられているボバースコンセプトによるものとPNFについてまとめていただきました.神経生理学的アプローチが誕生したころの神経生理学はそれぞれの立場が主張し合い,相互に相容れるような世界ではなく,必然的にボバースの主張とPNFとは融合するような動きはまったくみられなかったのでした.しかし,今や融合の時代と言われる神経生理学や社会の変化を背景に両者は転換を進めてきました.一方で,厚生行政に左右されながらも広い視野をもって現実的な活動を行う医療現場があります.そこではどのような指針で中枢神経障害の理学療法を展開しているのか紹介していただきました.その経緯は脳性麻痺の領域においてさらに深刻ですが,今後どのような転換がなされていくのか注目されるところです.
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