臨床実習サブノート 臨床実習に不可欠な基本的技能・12
ケースレポートのまとめ方
田中 正則
1
Masanori Tanaka
1
1国立病院機構大牟田病院リハビリテーション科
pp.259-264
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101905
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はじめに
「臨床実習教育の方法論は再考の時期を迎えている」と書くと,現在の臨床実習が何か大きな問題を抱えているように誤解を招くかもしれませんが,本来臨床実習には,学内の教育とは異なり,学習者が患者という具体的な対象者を通して日々知的好奇心を刺激され,自己学習の意欲をかきたてられ,学習した結果に喜びを見出すことのできる場1)という明確な規定があったはずです.その中でケースレポートの果たす役割は,臨床の場における問題解決型思考を導くためのアイテムであり,また,多忙な実習指導者にとっては,学生の能力を理解し指導を行ううえでのコミュニケーションツールのひとつであり,認知領域の学習方略でした.しかし,近年その機会を排除しようとする養成校も増えつつあり,臨床実習教育方法論の再考を,教員と実習指導者の双方が求めていると言っても過言ではないのかもしれません.
筆者は教員時代,学内教育で問題解決型学習を経験した学生に対して,臨床実習に赴く直前に1997年の本誌「入門講座」の進藤論文を解説して実習地に送り出していました.その経験を踏まえ,「学習者の興味・関心のある課題を取り上げ,それを学習者自身が主体的に考え,判断して理解することによって,新しい場面に適応できる能力を育てる」というDeweyが提唱した問題解決型学習2)が,なぜ臨床実習における学習方略としてなじみやすいのかを解説したいと思います.
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