特集 股関節疾患の理学療法―update
変形性股関節症のバイオメカニクスとADL指導
新小田 幸一
1
,
奥村 晃司
2
,
阿南 雅也
1,3
,
加藤 浩
4
,
木藤 伸宏
5
Koichi Shinkoda
1
1広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座
2医療法人玄真堂川嶌整形外科病院リハビリテーション科
3広島大学大学院保健学研究科博士課程後期保健学専攻
4九州看護福祉大学看護福祉学部リハビリテーション学科
5広島国際大学保健医療学部理学療法学科
pp.1073-1081
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101816
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はじめに
総務省統計局の人口推計2010年9月報では,2010年4月での日本人人口は約1億2千579万人で,このうち65歳以上の高齢者は23.2%にのぼるという確定値が示されている1).人口の高齢化率の上昇は,多くの高齢者が加齢に伴う運動器の機能低下と器質的変化を起こし,変形性股関節(osteoarthritis of the hip joint:股OA)をはじめとする,多くの下肢関節の疾患を増加させることは想像するに難くない.また股OAの患者は,ほとんど全例といってよいほど理学療法の対象となる.現在のところわが国での股OA罹患者率は欧米諸国と比べ高くはないものの,今後は上記のような人口動態のもたらす因子と,生活様式や食生活の欧米化によって罹患率が上昇すると考えられ,理学療法サービスの対象として重要な疾患であると思われる.
本稿では,股関節に求められる機能をバイオメカニクスの観点から解説するほか,最近の股関節機能に関わる新しい知見のいくつかと,変形性膝関節症でみられる脚長差に対し,臨床でよく行われる補高の考え方と注意点,歩行パターンとエネルギー消費について,日常生活活動(activities of daily living:ADL)の指導を含めて記述する.
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