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は じ め に
変形性股関節症(OA)は,日常生活において繰り返し負荷を受ける股関節において,次第に軟骨の変形・破壊および骨の変形が進行し,慢性的な関節炎を伴うことで痛みを生じる病気である.日本人の場合は,臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼のような先天的要因がOA発症の原因の80%以上である.
正常な股関節は,股関節運動を行うための理想的形状と構造を成すように進化してきたと考えられ,バイオメカニクス的観点からは,あらゆる股関節運動において適切な応力の分散と伝達が行われていると想定される.しかし,臼蓋形成不全のように,生まれながらにして構造や形状に異常が生じていると,力学的伝達機能にも異常が発生し,股関節を形成する組織に過度の力学的負担が発生する.このような力学的異常性が軟骨や骨組織の変形と破壊を引き起こし,OAを進行させると考えられる.
このようにOAに罹患した股関節において,股関節の運動状態でどのように応力の伝達や分散が行われているのかを知ることは,整形外科学的にも重要であり興味深い問題であるが,非侵襲的に計測することは困難であり,その詳細はいまだ明らかになっていない.
一方,ハードとソフトの両面でコンピュータ科学が急速な進歩を遂げた結果,股関節の実構造を模した数値モデルを作成し,さまざまな力学環境を想定した条件下で応力の伝達や分散を定量的に調べることが可能となっている1~4).
本稿では,最初にCTを利用した有限要素法(CT image based finite element method:CT-FEM)の基礎について解析し,次いでOAの症例に対してCT-FEMを用いて応力解析を行った研究例を紹介する.さらに,骨折を模擬する機能を付与したCT-FEMによるOA大腿骨の強度評価と正常大腿骨との比較,および大腿骨頚部骨折や大転子部骨折などの骨折現象の再現に関する研究成果を紹介する.
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