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はじめに
理学療法が病期別に分類されてきた背景には,超高齢社会の到来に伴う将来の医療・介護給付費の高騰,そこから生じる財源枯渇への危機感から始まった「医療制度改革」がある.医療制度改革では,急性期病院の平均在院日数を短縮することで高額な医療の提供期間を減らし,回復期や維持期へ早期に移行することで,総体的な費用を削減することを目的の1つとしている.そのため,急性期医療から速やかに移行できる「次の機能」を明確にし,移行をスムーズに行うための仕組み(連携)に力を入れる必然性が生まれた.リハビリテーションにおいても,理学療法においても,急性期,回復期,維持期という機能分化を明確にした理由はここにある.
医療機能の分化は,若年者が受傷した場合は効率のよいシステムであろう.しかし,医療費の多くを占める高齢者に視点を向けた場合,この機能分化には若干違和感がある.脳卒中や骨折のように,明らかな疾患により理学療法を開始した場合ならこの機能分化の流れにフィットするが,実はそうでない問題をもつ高齢者はたくさん存在する.多くの慢性疾患をもち,徐々に機能が低下する高齢者,急性期と同様の医療ニーズをもつ高齢者などが存在し,実は維持期といっても幅広い知識と経験が必要となる場面が多いのである.
日本リハビリテーション病院・施設協会では,「維持期リハビリテーションとは,障害のある高齢者等に対する医学的リハビリテーションサービス(リハビリテーション医療サービス)の一部を構成し,急性発症する傷病においては急性期・回復期(亜急性期)のリハビリテーションに引き続き実施されるリハビリテーション医療サービスであり,慢性進行性疾患においては,発症当初から必要に応じて実施される医療サービスである」1)と定義している.また,医療と介護の両方の場面で提供されてきた維持期理学療法は,主に介護保険で運用されるような制度に徐々に変わっている.チームアプローチが主体のリハビリテーションサービスのなかで,維持期における理学療法のニーズが高まっていることと理学療法士数が急増している現状を鑑みれば,今こそ維持期理学療法のありかたについて整理する必要がある.
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