とびら
強く生きて道を開く
中嶋 奈津子
1
1滝沢中央病院リハビリテーション科
pp.87
発行日 2010年2月15日
Published Date 2010/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101598
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先日,親しい方の奥様が亡くなられ,葬儀に参列した.まだ若く美しい,聡明な生前の御姿が偲ばれた.そして高校に入学されたばかりの,それは可愛らしいお嬢さんの姿をみつけ,胸が締め付けられた.その瞬間,私の脳裏にもう忘れかけていた記憶が蘇った.
27年前,高校生であった私は母をがんで亡くした.いつも笑顔を絶やさず,太陽のような人だった.料理や編み物が得意で,毎日のお弁当が私の自慢であった.病院など縁のない人だったのに,ある朝突然に脳梗塞を発症して病院に運ばれ,それと同時に手遅れのがんがみつかった.深刻な病状に加えて,言葉が話せず片手が使えなくなっていて,母はもちろん,家族にとってもそれまで経験したことのない辛さが波のように押し寄せた.
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