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はじめに
わが国の介護保険制度は2000年に導入されたが,そのコンセプトは「地域における自立支援を行い,地域で要介護者を支える」に集約されている.当初から要支援者に対する予防給付は行われていたものの,全体としては「介護」に偏し,「予防」の比重が低いものであった.このことは,いったん要介護状態となってからは多様なケアを選択できるという点で,介護負担を軽減することに貢献した.一方で,要支援,要介護1といった本来「自立支援」を図るべき対象者が自立を志向せず,むしろ要介護認定を権利として望み,自立への努力に水を差す側面があった.具体的には,要支援者に対する家事代行,要支援者や要介護1に提供される電動ベッドや車いすが,果たして自立支援に資するのか疑問視された.このため,介護保険制度については,制度全般に対する見直しが行われ,特に要支援,要介護1といった軽度の者に対するサービス内容や提供方法について「新予防給付」を創設し,より「自立支援」に資するものとなるよう改められ,2006年4月より実施されることとなった.
このような状況のなか,「介護予防ガイドライン」1)は,「痴呆・骨折臨床研究事業―寝たきりの主要因に対する縦断介入研究を基礎にした介護予防ガイドライン策定に関する研究」(代表・鳥羽研二)の報告書をわかりやすく編集し,2006年に発行された.介護予防という概念は,基本的ADL(basic activities of daily living)低下の予防,IADL(instrumental activities of daily living)依存の予防,および老年症候群の発症・悪化予防というきわめて広い概念である.本ガイドラインでは,「いったいどうやって評価し,介護予防ケアマネジメントを行い,どういう対象に,どのような介入を行ったら効果的であるのか」という問いに対して,わが国の縦断研究での成果を踏まえて答えようとしている.
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