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わが国の少子高齢化に伴う問題は近年深刻化しており,2042年には65歳以上の人口が3,860万人に達する一方で,総人口は1億人に減少し, 現役世代1.4人で高齢者1人を支える超高齢社会が迫っていると推計されています.そのような中で,社会保障制度を維持充実するための税制などのあり方や人口政策などが論じられていますが,高齢者に焦点を当てた介護システムや財政の確保だけでは,健やかな高齢社会を構築することは困難であり,むしろ,これからの高齢社会を支える子どもたちの生活環境や教育環境を重視したサポートが大切だと思います.例えば,一向になくならない児童虐待への対応,4万人以上いる保育園待機児童の解消,共働きの親に代わって放課後や夏休みに宿題や生活指導をする学童保育の充実など,子どもの生活・教育環境を改善することが,ひいては高齢社会を支えることにつながるという視点をもってほしいものです.同様に,小中学校の給食費滞納者や高校の授業料滞納者が急増していることに対して,支払わない親を一方的に非難するのではなく,子どもたちが気兼ねなく級友と共に給食を摂ったり,勉強できるような支援システムを創るべきだと思います.すなわち子どもたちを安心して育むことのできる優しいコミュニティなくして,どうして健やかな高齢社会を築くことができるのでしょうか.
さて,今月号の特集は「小児の地域理学療法」です.脳性麻痺児らに対する理学療法においては,長いライフスパンで身体機能を捉えた保育・就学支援から学業支援,生活支援,就労支援など日々の生活に密着した地域理学療法が求められています.米津・他論文では,児の運動発達と地域生活の場における多面的な生活支援活動の実際と課題について論述しています.藤本・他論文では,一般病院におけるNICUからの早期理学療法システムを,また中嶋論文では,肢体不自由児施設における児・者の一貫した療育システムについて論述し,両論文ともに地域支援センターなどとの連携の必要性を説いています.本澤・他論文では,通園部門を含む地域療育施設での就学支援から巡回リハビリテーションの関わりなど,地域に根差した活動について,また,多田論文では,特別支援教育におけるスクールセラピストとしての活動と役割について解説していただきました.
入門講座では,「肩関節画像のみかた」について,講座では,「大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン」について,わかりやすく解説していただきました.いずれも臨床ではよく担当する疾患ですので参考になると思います.
本誌がお手許に届くころには,第44回日本理学療法学術大会が開催されます.発表された演題を論文にまとめて,ぜひ投稿くださるようお願いします.
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