特集 不全型脊髄損傷の病態と理学療法
不全型脊髄損傷者の在宅生活支援
肥塚 二美子
1
Hizuka Fumiko
1
1関谷クリニック
pp.221-230
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101370
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はじめに
近年,脊髄損傷者のリハビリテーション(以下,リハビリ)は,急性期,回復期といった機能分化や入院期間の大幅な短縮化により,効率性が求められている.不全型脊髄損傷(以下,不全損傷)も例外ではなく,早期退院に向けて,機能回復,ADL(activities of daily living)練習を中心にトレーニングが行われ,家屋環境の調整や介護方法の指導も重要なポイントとなる.
しかし,脊髄損傷者は,急性期に合併症や全身状態の不良などで安静を強いられることがあり,心理的にも混乱状態が続き,入院期間中に積極的なリハビリを行うことが困難な場合がある.また,入院期間中のリハビリに対して不満感を抱き,「リハビリ途中で退院を余儀なくされた」と感じている場合や,退院後に痙縮や疼痛,しびれといった機能面の問題があるにもかかわらず,外来リハビリや在宅リハビリ(訪問リハビリ)を行っていないケースも多い.そういう意味では,退院後は維持期というよりも未だ回復期であるとも考えられ,機能,環境,心理面をも含めた包括的な援助を行っていく必要がある.
筆者の勤務する関谷クリニックは,大阪府の中ほどにある八尾市に位置し,リハビリ科,整形外科,リウマチ科を有している.リハビリスタッフは,理学療法士9名,作業療法士3名,言語療法士2名の体制で,介護保険,医療保険での外来および在宅リハビリを行っている.対象疾患は脳卒中が最も多いが,現在,約1割は脊髄損傷者であり,そのうち3割が不全損傷である.在宅リハビリは,八尾市を中心に,東大阪市,大阪市,堺市などの近隣地域で行っている.
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