とびら
センス・オブ・ワンダー
佐藤 秀一
1
1青森県立保健大学
pp.183
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101364
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「感性を磨く」という言葉をよく耳にします.最近では,福祉工学に関連して感性工学,感性評価,感性価値,感性ロボット,感性教育,感性ビジネス,感性マーケティングなどの新語も現れています.
ものづくり,とりわけ福祉機器開発では,運動解析で取得される関節モーメントなどの物理量を評価指標とした身体の力学的負担度の計測に加えて,感性評価を併用する手法が用いられています.代表的な官能検査の特性評価手法には,SD法(semantic differential method)があります.例えば,高齢者にとって身体の力学的負担度が少なく,物理的に起立動作が容易な椅子を開発したとします.しかし,使用者にとっては必ずしも心理的に負担感が少なく,快適で容易な起立動作が遂行できていないということがよくあります.そこで,物理計測のみならず,使い勝手や使用感などの心理計測による感性評価が重要視されているのです.階段昇降では,昇りのほうが位置エネルギーが増加する分,仕事を強いられるため,力学的にはきついはずです.しかし,感覚的には降りる時のほうがきつい動作に感じるということをよく経験します.昇る時,下肢の抗重力筋群は求心性収縮を,降りる時は遠心性収縮を呈します.つまり,力学的エネルギーと生理学的エネルギーでは異なる感覚をもたらすことを意味します.
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