- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
明けましておめでとうございます.未来永劫とは言いませんが,昨年は長期にわたって忘れられない年になりました.サブプライムローン問題が世界経済にその影を落とす中,8月には中国の北京で史上最大規模のオリンピックが開催されました.成長率の高さで世界経済を牽引してきた中国での開催であり,多くの注目を集めました.しかし,この短期間で世界経済がここまで急激に落ち込むとは,誰が想像したでしょうか.金融危機の顕在化,ガソリン価格の乱高下,自動車をはじめとする耐久消費財の買い控え.先進国のトップが集まって協調姿勢を約束するも,正規,非正規を問わない大規模なレイオフは後を絶たず,わが国では一流企業による学生の就職内定取り消しが社会問題にもなっています.そして,これらがそのまま引き継がれて新しい年を迎えました.地球規模の出来事ですから,個人的には見守ることぐらいしかできませんが,この苦境,不況を乗り切った時にはおそらく,地球に優しい世界が開かれているような気がしてなりません.そんな期待をもって新年を迎えています.
さて,新年1月号の特集は,理学療法士急増から生じる危惧の1つ,大量養成時代の教育について取り上げました.職能の急速な拡大によって生じる問題を先取りして考えたかったからです.大量養成による粗製濫造という厳しい批判や,専門職としての質の低下,淘汰の時代が来るといった意見があります.若者が極端に多い,いびつな年齢構成の職能団体ができあがることも事実です.その一方で,それだけ大きな若いエネルギーを内部に蓄えることができるのだ,という捉え方もできます.エネルギーさえあれば物事は必ずプラスの方向に進みます.そのような視点を前提として,執筆をお願い,あるいは座談会に参加していただいた皆様から,教育分野のみならず,今後の理学療法士のあり方についても多くの示唆をいただきました.その結果,多くの課題に対処しながら前に進んでいくことで,理学療法士の将来はやはり一層充実し,発展する方向に展開するという確信の得られる特集を組むことができました.関係していただいた皆様には,この場をお借りし改めて感謝申し上げます.本特集を手にとってくださった方々が,この課題を理学療法士界全体のテーマとして継続的に考えてくださるきっかけとなれば幸いです.皆様にとってよい1年となりますよう,心より祈念申し上げます.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.