特集 がん治療における理学療法の可能性と課題
がん治療の現状
辻 哲也
1
Tsuji Tetsuya
1
1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
pp.915-924
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101287
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はじめに
がん患者にとって,がん自体に対する不安は当然大きいが,がんの直接的影響や手術療法・化学療法・放射線療法などにより生じるかもしれない後遺症に対する不安も同じくらい大きいものである.がん患者の半数以上の命が助かるようになってきた現在,“がんと共存する時代”の新しい医療のあり方が求められている.しかし,これまで,がんそのもの,あるいは治療過程において受けた身体的・心理的なダメージに対して,積極的な対応がなされることはほとんどなかった.医療従事者にも,患者にも,がんになったのだから仕方がないといった諦めの気持ちが強かったように思う.
欧米ではがん治療の重要な一分野としてリハビリテーション(以下,リハビリ)が位置付けられているが,わが国では,最近までがんセンターなどの高度がん専門医療機関において,リハビリ科専門医が常勤している施設はほとんどなく,療法士もごくわずかという寂しい状況が続いていた.
その一方で,急性期,回復期,維持期リハビリの現場においては,がんの直接的影響や手術療法・化学療法・放射線療法などで身体障害を有する患者に対し,障害の軽減,運動機能低下や生活機能低下の予防や改善,介護予防を目的として治療的介入を行う機会が増加しており,がんに伴う身体障害はリハビリ医学の主要な治療対象の1つになりつつある.
本稿では,がん医療全般について,その概要を解説した後,欧米や日本におけるがんのリハビリの現状と課題,およびがんのリハビリの実際について述べる.
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