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はじめに
わが国における理学療法士の勤務先の内訳をみると,その70%以上は医療機関に勤めている(2008年3月時点).診療報酬改定のたびにリハビリテーション領域に対する評価が厳しさを増す中,理学療法士の将来に対する閉塞感は,着実に広がりつつある.さらに,2008年4月時点において,理学療法士の有資格者数は65,571名,全国の養成校の入学者定員総数は12,524名,卒業生は年間8,162名を数えており,まもなく理学療法士が毎年1万人誕生する時代を迎えようとしている.社団法人日本理学療法士協会は,理学療法士10万人時代,30万人時代に備えて,公的医療・介護保険領域における役割の拡大や報酬の向上,さらにはヘルスプロモーションや介護予防の領域など,新たな枠組みにおける理学療法士の職域の拡大に向けた様々な取り組みを進めている.
筆者は,理学療法士になって今年で25年目である.養成校を卒業した後,急性期の医療機関に8年間勤務し,その後は専門学校や大学で専任教員を務めてきた.大きなターニングポイントとなったのは,2000年から開始された介護保険制度であった.
介護保険制度の導入が決まった当時,有資格者を送り出す側の教員として勤務していた筆者は,次世代の理学療法士にどのような環境を作れるか,理学療法士界全体にとって大きなチャンスだと感じていた.従来の医師を中心とした医療リハビリテーションだけでは,本来の意味における「リハビリテーション」のすべてを完結することは不可能である.今後,さらなる高齢化が予想されるわが国においては,生活自立を力強く支援することができる地域リハビリテーションシステムが必要であり,その実現に向けては理学療法士の知識や技術が大いに活用できると考えたのである.
まず,地域で理学療法士に何ができるのかを,しっかりと位置付けた地道な実践が必要と考え,医師会や各かかりつけ医,地域で働く看護師やホームヘルパーと共に,どのような取り組みが可能なのかディスカッションを重ねた.
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