報告
アイスパックによる寒冷療法後の筋力の変化について
沼崎 康友
1
,
笠原 秀則
2
,
佐々木 誠
3
Numazaki Yasutomo
1
1あづま脳神経外科病院リハビリテーション部
2仙台医療技術専門学校理学療法学科
3秋田大学医学部保健学科理学療法学専攻
pp.163-166
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100785
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寒冷療法は,理学療法の治療手段の一つとして用いられている.疼痛軽減を図る効果があり1,2),その機序として感覚受容器の閾値の上昇3,4),発痛物質発生にかかわる代謝の減少3,5),痛みに関係する神経線維の伝導速度の低下3,6),反対刺激効果7)などがあるとされている.温熱療法にも同様に疼痛を軽減する効果があるが,特に発痛物質とされるヒスタミンやブラジキニンの産生に関しては,逆に増加させる8).この差異により寒冷療法は,温熱療法の禁忌となる炎症期の疼痛に対しても適応となる利点を有し,臨床応用されている.しかし一方で,運動神経伝導速度の低下9),神経-筋の興奮伝導にかかわる化学反応の低下10)が生じ,一定時間を超える寒冷刺激は筋力を低下させる11~14)との報告がある.
臨床場面では,疼痛が阻害因子となって筋力が十分に発揮できない者に対する前処置として寒冷療法を行った後に筋力トレーニングを実施させたり,スポーツ場面では,応急処置として軽度の打撲や捻挫,肉離れなどの軟部組織損傷に対しその部位を冷却して,競技を続行させる場合が少なくない.この際,寒冷療法による筋力低下の影響が疼痛軽減の効果を凌駕し続けるようであれば,効率的な筋力トレーニングやスポーツ活動の遂行能力が阻止されるものと考えられる.しかし,寒冷療法後の疼痛閾値と筋力の回復過程の推移を比較した研究はなされていない.
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