特集 末梢循環障害と理学療法
深部静脈血栓症・肺塞栓症に対する理学療法
津野 良一
1
,
元吉 明
1
,
福島 美鈴
1
,
谷岡 博人
1
,
浜窪 隆
1
Tsuno Yosikazu
1
1高知県立安芸病院リハビリテーション科
pp.999-1006
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100697
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はじめに
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)は,深部静脈に血栓を生じる病態(深部静脈血栓症:deep vein thrombosis:DVT)と,その血栓が静脈壁から剝離して静脈血流に流れ込み,肺動脈を塞ぐ急性の病態(急性肺塞栓症:acute Pulmonary Embolism:aPE)を併せた総称である.従来は,(欧米と比較して)日本では発症の少ない疾患とされていたが,医師や医療従事者の認識の高まりや診断技術の進歩によって増加傾向にあり,数年前より「エコノミークラス症候群」あるいは「旅行者血栓症」としても注目されるようになった1).
近年,急性期病院においては,感染症・低栄養・廃用症候群の予防を目的としたベッドサイドでの理学療法が行われ,早期離床が推進されている.しかし,ひとたび閉塞性DVTを発症すれば,一定期間の安静を要し,さらにaPEを誘発すれば発症直後より胸痛・呼吸困難・ショック状態となり,心停止に至るまで重篤化する症例も認められる.その結果,在院期間が長期化し,回復期リハビリテーション病棟への移行や自宅退院を困難にする重要な原因となる.そして,最近はDVTやaPE発症によってクリニカルパスにおけるバリアンスとなった症例も報告されるようになってきている2,3).
本稿では,2004年4月(平成16年)に作成された「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」を踏まえて,その病態,成因,予防法,理学療法の適応・効果についてまとめ,最後に当院リハビリテーション科での取り組みについて述べる.
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