理学療法の現場から
今,臨床という現場で思うこと
佐藤 博志
1
1栃内第二病院リハビリテーション部
pp.1042
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100616
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最近のリハビリテーション医療事情は,入院期間の短縮が政策的に進められる中,急性期,回復期リハビリテーションと,その後の地域リハビリテーションへの連携が重要視され,その一連の治療・ケアの流れがシステム化しつつある.限られた時間の中で,資源を最大限に活用して最大限の効果を上げることが求められ,生活の場を主体とした目標指向的なアプローチが必要とされている.
先日,外来診療での理学療法を希望されて来院された新患の担当となった時のこと.その方は約1年前に脳梗塞を発症し,左片麻痺を呈した整形外科医である.急性期病院から,他院の回復期リハビリテーション病棟での治療を経て,来院時は在宅生活をされていた.「入院中は装具をつけて歩けたのだが,今は膝周囲が痛くて家の中で歩けない.」という訴えで,治療を希望されてきた.これまでの治療経過を聞いている中で,「回復期リハビリテーションでは,ほとんど理学療法を受けていない.歩くことが中心だった.」と話された.決して理学療法が行われていないはずはないのであるが,この言葉の背景には,この方にとっては治療とは一線を画した機能代償の「指導」という理学療法士のかかわりが際立ってしまっていたのではないかと考える.長年にわたって整形外科医として臨床を積まれてきた医師の,われわれ理学療法士の専門性を問う一言として,謙虚に受け止めたい気持ちであった.
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