特集 難病の理学療法
多発性硬化症の理学療法
中林 健一
1
Nakabayashi Ken-ichi
1
1国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院
pp.89-97
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100417
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多発性硬化症(以下MS;multiple sclerosis)は不可逆的に進行する疾患である.したがって疾患によって生じる種々の障害も長期的に見れば不可逆的に進行する.他方,障害には疾患から直接生じる一次障害と,合併症や続発症としてみられる二次障害がある.一次障害は疾患と同様に治療困難であるが,二次障害は可逆的であり,予防や治療が可能である.また,MSのように増悪と寛解を繰り返すような疾患では,寛解期に受ける治療によって障害を軽減できるか増悪させるかが大きく違ってしまうこともまれではない.にもかかわらず,医師も理学療法士も,そして患者も上記のような疾患や障害の特性に気付かず,いわば機能的改善を諦めてしまっている場合がある.
本稿ではMS患者の障害像を明らかにしながら,特に運動療法に焦点を絞って理学療法による治療について述べたい.特に痛みなどの二次障害に着目し,「効果を上げるため」の評価と治療についてまとめた.また,MSに対する評価と治療の基本的部分は,痛みという共通する障害像を持つ他の神経筋難病や脳卒中などにも応用可能である.
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