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はじめに:メンタルプラクティスとは? イメージトレーニングという言葉は,一般的用語として広く知られている.例えばスキーで斜面を滑降する時,まず滑り降りる前に,「どのような姿勢や速さで滑降するか」についてイメージの中でリハーサルする場合などで用いられている.
Jacksonら1)によれば,心的イメージ(mental imagery)とは視覚,聴覚,触覚,運動覚などのさまざまなモダリティの認知的操作であり,なかでも運動イメージ(motor imagery)とはヒトの身体運動に関わるある特異的な行動を,実際の運動を起こさずに内的に再現することである.一方メンタルプラクティス(mental practice)とは,与えられた運動課題を積極的に改善しようとする企図をもって,心的あるいは象徴的なリハーサルを繰り返し行うことである.すなわちメンタルプラクティスは多様な認知的過程(運動イメージを含む)を用いることによるトレーニング方法であるとされる.したがって本稿で後述する研究報告ならびに方法は,脳損傷によって変容した運動行動を再構築するという点で,本邦で用いられているイメージトレーニングと同義であり,メンタルプラクティスの範疇としてとらえられる.
これらのトレーニング方法には,運動課題に対して自分自身が運動するようにイメージする場合(運動覚イメージ法:kinesthetic imagery),視覚的にイメージする場合(視覚的イメージ法:visual-motor imagery),および他者の実際の運動を観察する場合(observation)などがある2,3).この方法の違いについてFery4)は,視覚的イメージ法は運動学習初期に有効であり,一方運動覚イメージ法は両手の協調性が要求されるような課題に適していると指摘している.
本稿ではまずメンタルプラクティスに関する文献考察を行い,認知的介入方法として最近注目を集めているミラーセラピーに関して述べる.
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