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はじめに
物理療法に限らず,生体に刺激を加えた場合,その刺激の種類と強弱によって生体反応は異なる.過剰刺激は生体にダメージを与え,不足刺激は無反応・無効であるが,適切な刺激は有効な反応の誘起が可能である(Arndt-Schulzeの法則).超音波(以下,US)療法においても当然その原則に従う.しかし,USを照射する際に危険と安全,有効と無効を判断できるデータが物理療法関係の専門書に記載されていないため,教育的立場からも臨床的立場からも照射条件設定に関して,困ることが少なくないと思われる.事実,筆者は幾度となく困った経験がある.特に危険に関しては,物理療法の専門書にも具体的な危険を避けるための条件提示はない.たとえば,「キャビテーション発生により,毛細血管が破綻する危険性があるので注意を要する」とあるが,どのように注意すべきか具体的な記述はない.
生体組織に照射すると,USは反射,散乱,回折,屈折,吸収,透過,などを経ながら進行する縦波である.この波は組織で熱に転換され,細胞や組織を振動させ,損傷を与えるほどのエネルギーを持ち,生体を刺激することができる.しかも,理学療法で用いている刺激のなかで最も深部にまで影響を及ぼすことのできる大変魅力的な刺激の1つであり,私自身,理学療法士にとって大きな武器になる刺激であると信じている1人でもある.しかし,薬物療法における副作用研究に相当するような報告が極めて少なく,安全な慣習的照射量を検討するにとどまっている.
本稿では,現状で説明できる範囲で,US療法の有効性と危険性,事故予防と安全管理の面から検討した一部照射条件設定の提案などを紹介する.また,最近の先端技術への応用研究と理学療法への応用の可能性と期待についても若干触れる.
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