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高次神経機能障害例のリハビリテーションに関する評価と治療については,最近,脳機能分析の進歩や厚生労働省のすすめる施策などによって,注目を集めつつある.ここでいう高次神経機能障害の範疇は極めて多岐にわたり,失語症,失行症などのいわゆる古典的な巣症状のみならず,注意障害,認知障害,記憶障害,遂行機能障害などが包含されている.特に運動麻痺を示さない高次神経機能障害例は,従来の身体障害者に対する法的支援から漏れてしまうことが多く問題視されており,課題としてクローズアップされているのである.
しかし一方,理学療法士のかかわる症例は,従来から“感覚―運動障害”を合併している場合がほとんどであり,重複障害として現実的・臨床的な困難をきたしているのも事実であろう.筆者が平成14年9月に行った,理学療法士協会会員の在籍する1,872施設(有効回答率53.3%)を対象とした全国調査では,理学療法士がかかわっている高次神経機能障害の内容は表1に示すとおりであり,また表2に示した「苦慮している症状」の内訳をみると,認知症(痴呆症),半側空間無視などが中心的課題となっていることがうかがえる.またこれらの症状を呈する症例がどのようなADL項目で困難をきたしているかを図1に示した.例えば,失語症では意思疎通困難が最も頻度が高いなど,各症状に応じた項目が挙げられているが,移動動作,排泄なども共通して困難な項目となっている.これらのことは,理学療法士がかかわる高次神経機能障害はその特異的な症状だけでなく基本的な動作が障害されており,高次神経機能障害の中核症状そのものへの対応と同時にADLに関連付けたアプローチが必要であることを示唆している.
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