特集 脳科学からみた理学療法の可能性と限界
脳損傷患者の運動学習の可能性
沼田 憲治
1
Numata Kenji
1
1昭和大学保健医療学部
pp.223-229
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100048
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脳卒中患者のリハビリテーション効果に関してこれまでに多くの論議がなされてきた.しかし,その実証が困難であることなどから効果に関しては多くが否定的な見解を示すものであった1).しかしこの十数年の間に,神経生理学や分子生物学などをはじめとした分野から,中枢神経の可塑性や神経再生について驚異的な数の報告が提出され,これらの基礎的な知見を基にした研究から,近年リハビリテーション効果に関する新たな見直しがなされるようになってきた.すなわち,これまで実証困難であった,脳卒中患者の麻痺肢に対するある種の運動療法によって明らかな機能的回復を認めるとともに,それを裏付ける皮質の新たな再構築(可塑性)を認める多くのエビデンスが報告されていることである.これまでの中枢神経疾患の理学療法は運動学的観点が主体であり,麻痺や運動回復の神経学的メカニズムに関してはブラックボックスとして扱ってきた.しかしこれらの報告によって,従来の理学療法のあり方が脳科学を根拠とした立場へと方向修正が迫られる状況になっていると言っても過言ではない.
本稿では,これまでに報告された脳損傷後の運動障害に対するいくつかの運動療法とそれに伴う中枢神経の可塑性(treatment-induced neuroplasticity)について焦点を当て概説する.
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