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教育理論の変遷の歴史をみると,最も古い理論が形式陶冶である.その後,一般的な思考能力と推論能力の強化を促す理論を経て,1970年代には,固有領域の広範な経験と知識を育成すべきであるという理論が提唱された.そして現在支持されている理論が,1980年代に現れた「新統合理論」である1).新統合理論では,学生が自己の思考をモニターしつつ,固有領域の教科内容と一般的な思考技能(問題解決技能)の学習を結びつけることが重要視される.この理論を理学療法領域に置き換えた場合,一般的推論能力と領域固有の知識を実際の臨床場面に近い状況で,学生自身が主体となり学習する2)ということになる.そこで本稿では,「新統合理論」を踏まえつつ,実践的な固有領域における臨床的推論能力の育成に主眼をおいた教育方略について,臨床的推論およびその一般的な教育方略について述べた後に,本校で実践している教育方略とその効果および課題について紹介する.
臨床的推論とその教育方略
臨床的推論(clinical reasoning;CR)とは,患者の問題を解決する際の思考過程である.この思考過程については,いくつかのモデルが提案されているが,一般的な推論モデルに仮説演繹的推論がある3).これは初期情報から問題の仮説を立て,仮説検証のための情報収集を行い,最終的に適切な診断や治療プランの意思決定を行う方法である.その一般的教育方略としては,内省法,パネルディスカッション,フィッシュボール,模擬患者法,ピア学習法4)などがある.本校では,症例基盤型学習(case-based learning;CBL)を軸とした方略で理学療法領域における推論能力の育成を試みている.次に,本校の教育方略の変遷を具体的に示し,その効果と問題点を述べる.
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