増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
5.遺伝子検査の今後の展望
遺伝子検査の今後の展望
奈良 信雄
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床検査医学分野
pp.1170-1172
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906394
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はじめに
20世紀後半に急速な発展を遂げた分子生物学,遺伝子工学などを応用して,疾患の病態が遺伝子レベルで解析されてきた.異常ヘモグロビン症,フェニルケトン尿症など先天性疾患はもちろん,高血圧症,糖尿病,悪性腫瘍など後天性疾患においても,遺伝子解析が進められている.それは,先天性,後天性を問わず,ほとんどの疾患において,病態の発生や進展に遺伝子が多少なりとも関与していることによる.そして,遺伝子解析は病態解析だけにとどまらず,臨床検査の分野にも応用が進められている.実際,肝炎ウイルスや抗酸菌などといった病原微生物の同定,白血病など造血器悪性腫瘍の診断においては,遺伝子検査はもはや欠かせない臨床検査になっている.
遺伝子検査が普及しているのは,表現型(phenotype)だけでなく遺伝子型(genotype)を検査することで,より病態に直結する精密なデータが得られることによる.迅速に結果が得られる利点もある.その反面,コストがかかる,技術の習得が十分でない,必ずしも標準化されていない,などといった短所も指摘される.こうした短所は,今後の技術画新で,いずれは解決されると思われる.
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