特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
1) 悪性腫瘍 (6)家族性腫瘍
林 泰秀
1
Yasuhide HAYASHI
1
1群馬県立小児医療センター
キーワード:
家族性腫瘍
,
遺伝性腫瘍症候群
,
Li-Fraumeni症候群
,
染色体切断症候群
Keyword:
家族性腫瘍
,
遺伝性腫瘍症候群
,
Li-Fraumeni症候群
,
染色体切断症候群
pp.1383-1387
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101426
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はじめに
近年の分子生物学の進歩により,発癌の発症機構の解明が急速に進み,また,網羅的なゲノム解析も可能となり,癌予防の考えが現実の問題となってきた.このため家族性腫瘍(familiar tumor)に対する認識が高まり1),研究も進展している.これまでに,癌抑制遺伝子として網膜芽腫(retinoblastoma;RB)からRB遺伝子が,ウィルムス腫瘍からWT1遺伝子が単離され,さらに17番短腕(17p)にあるTP53遺伝子が単離されている.また胚細胞変異を有する家族性腫瘍のうち,Li-Fraumeni症候群がp53遺伝子の異常が原因で発症することが見いだされ2,3),9pから単離されたp16遺伝子が4),家族性悪性黒色腫の原因遺伝子であることが判明し5),癌は遺伝子の病気であるばかりでなく,その一部は遺伝することが明らかになった.さらに,DNAチップやマイクロアレイを用いたコンピューター遺伝子工学の進歩により,一塩基の違いを簡便に論ずる時代が到来し,正常な表現型を示す集団内において,一塩基の違いによるsingle nucleotide polymorphisms(SNPs)による癌になりやすさの研究も始まっている.本稿では家族性腫瘍,特にLi-Fraumeni症候群,家族性悪性黒色腫,およびその他の家族性腫瘍と高発癌性遺伝病および多因子癌素因について,最近の知見を述べる.
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