増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
1)感染症
(10)病院感染菌型別
満田 年宏
1
1横浜市立大学医学部臨床検査部
pp.1038-1042
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906353
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病院感染菌型別法の現状
この20年の間に細菌の型別法は分子生物学的解析手法の進歩とともに急速に発展してきた.図1に,主要な細菌型別法による解析結果の系統発生学的な意味づけを示す.これらを疫学情報として利用する際,解析対象が院内感染事例であっても食中毒事例であっても適応や解釈の基本は変わらない.菌固有の染色体情報の「DNA塩基配列」そのものを比較することは最も多様な情報に富み,幅広い意味付けを可能にする.
現在行われている主要な病原菌型別法の機能比較してみると,本誌「Ⅱ.各論-2.技術編」で述べたパルスフィールドゲル電気泳動(pulsedfield gel electrophoresis;PFGE)型別法がバランスのとれた優等生であることがわかる(表1).PFGE法はMolecular Typing Working Group of the Society for Healthcare Epidemiology of America(1997)の示す主要病院感染および市中感染症原因菌の標準的型別法の一覧(表2)でも,標準的菌型別法として推奨されている1).しかし,いくつかの例外もある.例えば,ディフィシル菌の場合PFGE解析を試みるとバンドがスメアになり解析不能であることが多く,この不安定さからAP-PCR(arbitrarily primed polymerase chain reaction)法がむしろ普及している2).
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