技術講座 細菌
溶血レンサ球菌の群・型別法—特にA群およびB群菌について
児玉 博英
1
1富山県衛生研究所細菌部
pp.721-728
発行日 1984年8月1日
Published Date 1984/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203114
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
溶血レンサ球菌(溶レン菌)は,広い意味ではさまざまな溶血を示すグラム陽性球菌で,カタラーゼ反応陰性のものの総称である.これらは菌体の多糖体抗原によって,AからUまで(うちIとJは紛らわしいので欠記号)の19群に分けられる.狭い意味では,このうちβ溶血またはαプライム溶血(鏡検で溶血環内に血球基質が残存する状態をいうが,肉眼的には弱いβ溶血)を示すものを指すが,ヒトから分離される溶レン菌はほとんどがA,B,C,Gの4群に属し,その構成比は,A群が約80%,B群が10〜15%,C群とG群合わせて3〜5%である1).
A群は猩紅熱をはじめとするヒトの上気道疾患,丹毒を含む化膿性疾患,さらには続発症としての腎炎,リウマチ熱などの原因であることが以前から知られているが,B群もまた新生児の髄膜炎,原発性上気道疾患や,成人の尿路感染症などの原因として,近年ますます注目されるようになった.現在,病因との関連で最も高頻度に分離されるのは溶レン菌であり,その90%以上はA,B両群によって占められているという事実を念頭において,本稿では主にA群とB群について,市販血清が利用できる範囲で,血清学的な群・型別法を述べる.しかしながら,菌分離の段階で見落としがあっては意味がないので,培養上の特徴,溶血作用,生物学的性状についても,紙数の許す範囲で触れる.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.